大きくする 標準 小さくする


顧客と社員、優先するのはどちら

投稿日時:2008/08/28(木) 10:17rss

<質問>
経営とは答えのない決断の連続だと思います。
たとえば、どうしても顧客か社員かのどちらかに不利益を与えなければいけないような状況に陥ったとき、経営者としてどちらを優先すべきだとお考えですか?
また、それはなぜですか?
(東京外語大学4年 紅林達也さん)





編集部の大西氏が述べられているように、企業には顧客と社員の不利益をどちらかにもたらさないといけないような場面がいくつもあります。
言わば二つの利益が対立する関係(対立関係)です。



1)業績不振の突破口を、価格改定(値上げ)とリストラ(社員への退職勧奨)のどちらに見出すか
  「値上げをする」VS「リストラでコストを下げる」


2)顧客満足を追求するためのサービスの向上が労働強化につながる場合、どこまでのレベルのサービスを社員に要求するか
  「顧客へのサービスレベルを上げる」VS「労働強化(例えば残業時間を増やす)する」


3)業績アップのおかげで得た余剰利益を、値下げを含めて顧客に還元するか、社員の賞与を上げることで働きに報いるか
  「値下げする」VS「賞与を上げる」




教科書的に言えば、「企業を取り巻くステークホルダー(利害関係者)の調整を行わないといけない場面」ということになるのでしょうか。
私たちはこのような対立関係をどのように解消すればよいでしょうか? どちらかを優先せざるを得ないのでしょうか?



例えば1)の対立関係は「値上げをする」VS「リストラでコストを下げる」ですが、よく見るとひとつの共有目的が見られます。 それは「業績不振を解消する」です。
図示すると以下のようになります。


業績不振を解消する




「業績不振を解消する」ためには、「売上の機会損失を失わない」。そのためには「値下げして売りまくる」、

一方、「業績不振を解消する」ためには、「リストラしてコストを下げる」。そのためにはマンパワーが減っているのだから、「値下げしてやみくもに売りまくらない」ことになります。



一見するとどちらも正しいやり方に見えます。経営としては両方ともロジックが通っている。
ですがよく見ると、どちらの方法もロジックを作るための理由があるはずです。



「売上の機会損失を失わない」と考えるのは、
・売上の機会を失ってしまえばもう還ってこない
・とにかく何でも売らないとコストが回収できない
・どの製品やサービスが売れるのかよくわからない
という理由があるのかもしれません。


また「リストラしてコストを下げる」と考えるのは、
・リストラしないと倒産してしまう
・利益率が下がるとこれ以上銀行からお金が借りれない
・一端下がった価格は元に戻せない。(戻すと顧客が逃げてしまう)
という理由があるかもしれません。



でも、もしここで
売れている製品やサービスが何かがわかり、そこに注力すれば「売上の機会損失を失うこと」を考えるでしょうか?


また利益率の低い製品やサービスを取りやめ、高い製品やサービスだけに経営資源を投入すればリストラしてコストを下げる必要があるでしょうか?



目的は「業績不振を解消する」です。 それぞれのロジックを組み立てている理由を振り返り、その理由を解消する方法を見出すことで、対立した関係を解消することは可能だと思います。


現実問題としてロジックを組み立てている理由を解消する方法を見つけるのは難しいかもしれません。
ですが経営判断を行うときに自分のロジックの組み立て方を振り返ってみましょう。


顧客も社員も会社も三方良しの方法がきっとどこかにあるはずです。

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コメント


質問にお答えいただき、どうもありがとうございます!

澤田社長

初めまして。
東京外国語大学の紅林達也です。

質問にお答えいただきありがとうございました!

図も用いて説明していただき、
大変わかりやすかったです!

一見顧客と社員の利益が対立関係にあっても、
ロジカルに考えて、
問題の根っこにたどり着けば、
双方の利益を損なわずに問題を解決できるケースがあるのですね!

普段あまりロジカルな考え方をしない私には、
まさに目からうろこでした。

私も二者択一の場面で“第三の妙手”が打てるような社会人になるべく、日々精進したいと思います。

どうもありがとうございました!

Posted by 紅林達也 at 2008/08/28 17:03:00 PASS:
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同志社大学文学部社会学科社会福祉学専攻を卒業医)松田クリニック・健育研究所に勤務し、デイケアなどに精神科ソーシャルワーカーとして携わった。 ソフトウェアハウス、外資系メーカーにて経理・総務・輸入物流の担当を経た後、2001年(株)サワダ製作所 代表取締役。TOC(制約理論)思考プロセス・ジョナの有...

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