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2007年07月12日(木)更新

本の中の美術館

美術館に行って、絵を観るのはとても好きです。
美術館に漂う一種独特の雰囲気、静けさ、そういったものも含めて。

だからお本屋に並んでいるような画集や絵葉書は買ったり、手にしたりする気が何故か起きない。
紙に印刷された絵はどれもこれも表面的な感じがして、何も感じないのです。
美術館で絵を前にしたようなある種の感覚や感動が生まれない。


でもこの本は違っていました。
江國香織の「日のあたる白い壁」(集英社文庫)


日のあたる白い壁(江國香織著 集英社文庫)


ゴーギャンのオレンジはとてもおいしそうに見えるし、
ボナールの浴槽は、本当にのべーっと身体を伸ばしているように見える。
ムンクの子どもたちは本当に御伽噺の子供達って感じ。

たぶん江國さんの文章がそうさせているのだと思う。
美術館に行ってもあっさりと通りすぎてしまうドラクロワの「花の習作」も江國さんが言うとポケットに入れたくなるから、不思議です。

美術館にある多くの絵の中で出会う絵は、心の琴線に触れたとき。
でもあまりの多くの絵で見逃してしまうこともあるでしょう。

1冊の本の中で、自分のペースで、
一枚一枚丁寧に文章を味わいながら出会うのも悪くないと思います。